高野勝洋の作品

テーゲー

 

お年寄りがすんごく元気なのが沖縄である。

牧志のとある呑み屋で、友人のMと泡盛&チャンプルーを堪能していると、
隣席のお爺さんが話しかけてきた。

「 東京の人かい? 」

みたところ70歳くらいだろうか、頬はこけて、髪が真っ白なので琉球仙人かと思ったくらいだが、
なんともいえない優しい表情で俺をみている。

おもむろに、「 こいつをやってみな 」といって、地酒をごちそうしてくれたのである。

俺は友人Mと、顔を見合わせて一気にその古酒を飲み干した。

「 うっひょーっ!!! 」絶叫する俺とM。

「 楽しいべ 」琉球のお爺さんはケラケラ笑いながら言う。

 

 

お爺さんは昔、糸満で時計屋を営んでいたという。

なるほど、俺がカメラを持っていたから、話しかけてきたんだろうと俺は一瞬思った。

「 いいんや。あんたが暗い顔をしとるからだ 」

時計屋のお爺さんはにこりと笑う。

マジか?と疑って、俺は友人Mの顔を確認した。

お爺さんは本当に気持ち良さそうによく笑った。

沖縄の人は感情で動いていると、よく聞く。
悲しい時は泣くし、怒りたい時には怒るし、楽しい時には笑う。

ごくごく当たり前のように聞こえるが、東京に住んでいるとそんな感覚はついつい忘れてしまう。

へたすると、そんな感覚は失ってしまうんじゃないだろうか。

感情を殺して、言い訳を探して自己防衛しなければコミュニケーションできない社会なんだろう。
人と人の交わりなんて、うすっぺらく、言葉も軽い。

それでいて、欲深いから厄介なんだよね。

ひとの弱さを愛せるけど、卑しさは愛せないから。

外よりも内へ。
それは、スマホの普及でより一層悪化している。
人間関係の後始末でさえ、SNSやメールでOKみたいなさ。

寂しくて、小さい世界だよね。

正直、しんどい。

苦しい。

ひとが怖い。

 

高野勝洋と沖縄

 

「いちゃりばちょーでー」

不意に、向かいの席から笑い声とともにそんな叫び声が聞こえてきた。

みんな仲良くって意味らしい。

にぎやかで、陽気な雰囲気だ。

実際、こちらの人たちとの会話は気持ちいい。
裏がないからだ。
かけひきがないからだ。

嘘がない。

嘘をつくひとは、自分の顔にそれがあらわれてることを知らないから、手に負えない。

小さな世界で生きてるんだろうと思う。

 

 

「 人はさ、ひとを愛さなきゃだめだよね 」と、突然、お爺さんが言う。

見事に的を射た言葉であって、俺は静かにうなずくしかない。

おもわず涙がでた。

「 これからさ、うちのバアが踊るから、見てから帰れよ 」お爺さん。

店員が座敷の扉を次から次へと外している。
いつのまにか、店の様相が一気に早変わりしている。

ふすまの奥から三線の音色が聞こえてくる。

琉球舞踊がはじまろうとしているのだ。

「 お爺さん、おいくつなんですか 」俺はずっと気になっていたことを恐る恐る聞いてみた。
「 こんど87〜 ♪」陽気な笑顔で答えるお爺さん。
「 うっひょーーーーーーっ! 」俺と友人M。
「 テーゲーしいきるがいちばんさあ 」お爺さん。

テーゲー?

はてな?と俺は友人Mの顔をのぞく。

「 テキトーに!とか、こだわらないで!って意味 」友人M。
「 テキトーってお前じゃん!」Mに指を指して言う俺。
「 おいっ、オレは仕事はこだわってるよ!まじで! 」友人M。
「 うん、確かに(Mは有名なカメラマン) 」もうすでに眠くなっている俺。
「 カツもさあ、早く沖縄住みなよ 」友人M。
「 うん、住みたい。東京に帰りたくない 」もう完全に酔っている俺。

 

 

テーゲー。

いい意味でこだわらないってことなんだろうな。
気軽にとかさ。
おおらかに生きようってことだろうな、きっと。

俺、まじめ過ぎるんだよな(泣)

恋愛もさ、愛し過ぎちゃう。だめなんだね、それじゃ。

つーか、もう、このへんくらいまでしか覚えていない(笑)

泡盛おそるべし!!!

 

Nikon FM2  50mmF1.8 Kodak  PORTRA160NC
PENTAX67  TAKUMAR90mmF2.8  Kodak PORTRA160NC

photographer 高野勝洋

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