高野勝洋の作品バリの風景高野勝洋とバリウブドの風景高野勝洋の写真バリの町並み クタの町並み

正午過ぎ。

俺は目を覚まして、窓辺の木製の椅子に腰を下ろす。

太陽の光が暖かい。とりあえず、ビールを飲む。

一日に飲むビールの量を減らそうと決めていたことを思い出して、我ながら呆れてしまう。

ビールを飲むと気持ちが落ち着く。心が安まるのだ。

ロビーに電話して、新しいタオルをもってきてくれと頼む。

大柄で恰幅のいい男がタオルをもって来る。

『 オハヨーゴザイマス 』バリのひとはみんな愛嬌がいい。

俺はチップを渡す。

 

写真のことを考える。どこかの国の風景だとか、ある女の裸だとか。

それから、カメラのこと。フィルムかデジタルか。

しばらくして、どれもこれもくだらないと思う。

 

窓の外を覗くと、中庭のプールの脇で欧米人の女性が読書をしている。

なにを読んでるのだろうか。いたずらに想像してみる。

しばらくたって、俺も本を読み始める。

小説の世界が羨ましい。あらゆる虚構のなかでもっとも身近で親しみ易い。風呂にゆっくり浸かってぼーっとするのと同じだろうか。

バックに詰め込んできた本。「 青空 」(ジョルジュ・バタイユ)、「 宇宙の息 」(アレン・ギンズバーグ)、「 南回帰線 」(ヘンリー・ミラー)。

ろくでもねー。なんだこのチョイスは(笑)

なんだか最近、活字に飢えてるかのようだ。

俺もなにか書こう。気分が変わるかもしれない。

 

だけど、キーボードを叩いているとイライラする。

パソコンがあまり好きではない。

 

ネット上をしばらくふらふら歩き、無味乾燥とした景色をぼんやり眺める。トピックやメール、それからSNSとか。

退屈極まりないとわかっていながら、何かを期待しているのだろうか。

ある旅行サイトで長居をする。ひとり参加で、イタリア4都市ローマ、フィレンチェ、ベネチア、ミラノのツアーが九日間で17万。案外安いかもしれないとささやかな興味を抱く。それから、パリやバルセロナも似たような商品が並んでいる。ヨーロッパに行って、一カ国ではもったいない。往復航空券が10万だとして、宿泊費と食費が一日1万。問題は移動費だけだ。40~50万で一ヶ月で何カ国を回れるか考えると、このようなツアーはやはり割高だと言うしかない。

短い時間で楽に軽く旅をするなら、ビザの取得などで入出国が面倒じゃないアジアがやっぱり楽だ。

こんなふうに旅の計画をするのは暇つぶしに向いている。

つーか、こんなこと東京にいるときに考えよう(笑)不意に我に帰り思う。

 

種を寝かせる

考えは一度水をくぐっている必要があるように思われる。

寝て目を覚ました時の考えがそうであるし、しばらく忘れるともなく忘れていると、おそらく無意識のうちに熟していたであろう考えが突然躍り出る。

意識という水面下では見えない成熟が無意識という水面下において進んでいて、好機に恵まれると、外へ飛び出して来る。

アイデアよ出てこい、とばかり、絶えず追いかけ回しているとかえって、ろくでもない考えばかりひっかかるようだ。

ほんと、ろくでもない。

 

さて、今日はどこを歩こうかな。

のんびりと、ぶらぶらと。

そう、俺はずっとこれがしたかったのだ。

 

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PENTAX67  TAKUMAR90mmF2.8 FUJI PRO160NS
CONTAX RTSⅢ  CarlZeissPlanar 50mmF1.4   Kodak TRI-X400

photographer 高野勝洋