TOKYO

カメラマン高野勝洋の作品「東京」

 

まるで病人になったみたいだ。いや、俺は病気のふりをしている。なにもしない。なにも感じない。それがどうした。泥酔する。吐き気がする。無気力。いっこうにかまわない。病人でいい。急に、涙がでてきた。ハイボールを一気に飲み干す。

『うえっ。きもちワルっ !』

長年、酒を飲み続けてきたが、時々『 すんごく、まずい 』と感じることがある。

しかし、まったく懲りずにまた呑んでしまうのが中毒者だ。

沖縄で買って来た泡盛をストレートでクイっとやる。

『 なんだこりゃ!ゲロを包んだ雑巾を搾ったんか!』

あー、吐き気がする。

しばらくして、別の酒をまた呑む。

 

東京の写真

 

パソコンを開いて最新のニュースをチェックしながら、俺は考えていた。

嫉妬について。

それは決して望んで考えるべきことではなく、押し殺してしまいたい一種の腫瘍ようなものである。ろくでもない。

ジェラシー♪愛はジェラシー♪(by 井上陽水)

呑気なオヤジだ。ニッポンの歌謡曲は、だからキライだ。

嫉妬は愛のバロメーターである。これはどっかの詩人が言ってた言葉だが、こんなアホな格言が微妙に的を射てるもんだから、かゆくてしょうがない。あー、かゆっ。

そもそも、一体なにが嫉妬なのかもわからない。

ある日、突然、患うこととなった嫉妬という病によって快適に進むはずの時間をいよいよ中断せねばならなくなる。

嫉妬という病。難解すぎる問題だがクリアしなきゃならない。

我慢してもいいことはまずない。

薬をのむ。ろくに効き目のない薬だがのまずにはいられない。

つーか、ひとの欲は底なしか。

恋愛相手が自分の思うように生きてくれて、おまけに自分ことを好いてくれるなんていう、甘ったるい平和な白昼夢をみているから厄介なんだろう。

そもそも人は、それぞれ自分を守る生き物である。

他人になにを期待するんだろうか。

我ながらビックリする。

煙草は知らず知らずのうちに吸いきってしまい、俺は灰皿の中のシケモクを選んでいる。

あー、いよいよイヤになってきた。

欲求不満。進むべき道の選択は保留のまま。

俺はますます鬱々としながら窓の外を眺めた。

こいつは長く続くとまずい。

鬱を散じる必要がある。

病は気からだ。

 

渋谷の写真
高野勝洋の新宿
六本木の写真
新宿の写真
東京の風景
カメラマン高野勝洋の作品「東京」

 

歌舞伎町のバー。

『おいッ』俺は隣で呑んでるオンナに話しかける。

『彼女が俺以外のオトコとヤってるんだ。どう思う?』

『あら、それはお気の毒』女。

『ファック。いくらだ、アンタ?』

『決めていいよ』女。

足が綺麗で、おまけに乳がデカい。しかし、なんだそのマツ毛は?

どこにでもいるモデル風のオンナ。ようするにSEXだけのオンナ。

頭の悪いオンナとの会話は苦痛でしかない。

人間の心は狭いが、意識にはゆとりがあるもんだ。

 

高野勝洋の写真
東京渋谷の繁華街
東京・新宿の夜
東京都新宿の繁華街
東京の夜
渋谷の街並み
東京・渋谷の風景
夜の新宿のスナップ
東京都渋谷の街並み

記憶とは薄れ易いものだ。

近所の小道を歩くだけで過去の場面がゆっくりと甦る。

他人の家の表札、ブロック塀をつたう蔓草、駐車場に並ぶ古びたトラック。

なんでもない風景が記憶を呼び起こす。

匂い。音。

『見えないものへの欲求』まで俺を満たしてくれる。

 

小学生だろうか、男の子と女の子が二人でサッカーボールで遊んでいる。

兄弟か、友達か、ひょっとしたら二人は付き合っているのかもしれない。

彼らは横目でちらちら俺を見ながらボールを蹴り合っていた。

住宅街を抜けて、大きい道路にでると視界が揺れた。

行き交う車両の間を眩しいほどの光線が照りつける。

舗装された道路や立ち並ぶマンションの外壁に光がぶつかりあっている。

 

カメラは、光の佇まいをみている。

 

俺は今、一体なにをみているのか、ぼんやりと考えた。

 

旅にでよう。

 

電車の中で眠る人々
東京都渋谷の路上で働く人々
新宿の風景
東京・新宿の町並み
路上で眠る人々
カメラマン高野勝洋の写真
写真家・高野勝洋の作品

 

PENTAX67  TAKUMAR90mmF2.8 FUJI PRO160NS
CONTAX RTSⅢ  CarlZeissPlanar 50mmF1.4   Kodak TRI-X400

photographer 高野勝洋保存

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